異所性妊娠は妊娠全体の約1%に生じる疾患で、異所性妊娠のうち約98%は子宮外の異所性妊娠、即ち子宮外妊娠となります。異所性妊娠の95%以上を占める卵管妊娠は、発見が遅れると、卵管破裂、急性腹症、出血性ショックの原因となるため、早期発見が求められます。異所性妊娠の最も多い原因は受精卵の移送障害で、次に受精卵の着床異常も原因の一つです。近年、帝王切開分娩や体外受精胚移植で妊娠する症例が増えているため、異所性妊娠も増加の傾向にあります。妊娠が判明しましたら産婦人科の病院で妊娠週数と妊娠状態の検査をすることが大切です。
ひとりで悩まずご相談ください
03-3408-5526子宮外妊娠、異所性妊娠の発生確率と危険性
異所性妊娠の発生率は全妊娠の約1%と言われていますが、異所性妊娠のリスク因子の高い方は、その発生率は上昇する可能性があります。
●子宮外妊娠の発生部位
異所性妊娠、子宮外妊娠の発生メカニズムⅠ.精子と卵子が卵管膨大部で受精して受精卵となります。
Ⅱ.受精卵が卵管を移動して正常な子宮内膜に着床すれば正常妊娠となります。
Ⅲ.正常な子宮内膜以外に着床した場合は異所性妊娠となります。
Ⅰ. 卵管膨大部で受精
Ⅱ. 受精卵が子宮に移動して正常な子宮内膜に着床(➀)
Ⅲ. 異所性妊娠の部位(②~⑩)
➀正常妊娠(正所性妊娠) ②子宮頸管妊娠 ③帝王切開瘢痕部妊娠 ④子宮筋層内妊娠 ⑤卵管間質部妊娠 ⑥卵管峡部妊娠 ⑦卵管膨大部妊娠 ⑧卵管采妊娠 ⑨卵巣妊娠 ⑩腹膜妊娠
●子宮外妊娠の確率
子宮外妊娠は、妊娠した女性の100人に1人程度の確率で起こり、子宮外妊娠のうち95%以上は卵管妊娠となります。再発率は約10%程度と低くはありません。
●子宮外妊娠を放置する危険性
生理が遅れても月経不順と思いこみ、妊娠を意識しない人がいます。その場合、子宮外妊娠になっていても気づかずに放置することになります。最も多い卵管妊娠の場合は卵管破裂、急性腹症、出血性ショック、を引き起こす可能性があり、緊急性を要する疾患となります。
生理が遅れて妊娠の可能性がある場合は、まず尿による妊娠検査をしましょう。尿妊娠反応が陽性でしたら、次に産科婦人科の医療機関で医師による超音波検査を行います。正常妊娠なら、妊婦検診等の次のステップへすすみます。子宮内に胎嚢が見えない場合は、妊娠週数が小さいために見えないのか、流産か、子宮外妊娠かを、症状と時間の経過で判断することになります。
子宮外妊娠は緊急性を要する病気ですので、医師とよく相談しながら、胎芽が発育して緊急事態になる前に処置を行います。
尿検査と血液検査でヒト絨毛性ゴナドトロピンhuman Chorionic Gonadotropin(hCG)を定期的に調べて、超音波検査で胎嚢、胎芽・胎児の着床場所を検出します。正常妊娠、流産、子宮外妊娠の鑑別を行います。
[注] お腹の中の赤ちゃんはすべて胎児で、その中でも10未満は胎芽と呼ぶことがあります。
[注] 中絶と流産の基礎知識
[注] 子宮外妊娠と異所性妊娠の症状
子宮外妊娠につながり得る原因
異所性妊娠の原因は、受精卵の移送障害と着床異常が多いです。
子宮外の異所性妊娠の多くは受精卵の移送障害が原因で95%以上が卵管妊娠となります。子宮内の異所性妊娠の原因は着床部位の異常となります。
▼本文
受精卵の移送障害としては、受精卵が卵管膨大部から子宮内膜に移行する間に、何らかの原因で移行障害が生じて、そのまま卵管部分に着床してしまう卵管妊娠が最も多いです。移送障害の原因としては、クラミジア感染症、子宮内膜症、過去の卵管形成術、喫煙習慣、等があげられます。
受精卵の着床障害としては、既往帝王切開術妊娠、筋腫核出術後、体外受精・顕微授精胚移植、等があります。
- クラミジア感染症(STD)
クラミジア性感染症は卵管機能に炎症をもたらし、卵管の癒着が起こりやすいです。卵管は収縮や拡張を繰り返して受精卵を子宮へと運ぶため、受精卵の移動中に卵管などに着床して子宮外妊娠させる可能性を高めやすいです。クラミジア感染症を予防、治療することは子宮外妊娠のリスクを減らすことにつながります。
- 喫煙習慣
喫煙によってタバコの化学物質が血管の内皮細胞に作用して血管内皮機能が障害されます。卵管の血管にも血管内皮機能障害が生じて卵管の運動障害が生じると考えられています。喫煙の習慣は、卵子の質や、卵管の運動に悪影響し、子宮外妊娠の発生リスクが約2倍に高まると言われています。ご自身の禁煙だけでなく、パートナーが喫煙される場合、受動喫煙にも気をつけるようにしましょう。
- 高齢妊娠
高齢で妊娠した場合、様々なリスクが高まることが知られており、一般的にハイリスク妊娠となります。子宮外妊娠もそのうちの一つで、子宮外妊娠の発生率が高くなります。
- 子宮内膜症
子宮内膜症の既往がある方の場合、卵管内における炎症や癒着が原因で卵管が閉塞しやすくなります。受精卵が卵管を移動中に移送障害が起こり子宮外妊娠の原因となることがあります。
- 体外受精
不妊治療のために行ったARTの体外受精での胚移植が、子宮外妊娠のリスクが上昇する原因として挙げられます。子宮内に戻した移植胚が、卵管へ輸送され、卵管の輸送障害があるとその場に着床して子宮外妊娠が発生する原因になると考えられています。
- 卵管形成手術
卵管の閉塞や狭窄を改善するための卵管形成手術を受けたことのある方の場合、手術による炎症や癒着が起こる可能性があり、子宮外妊娠の原因となる場合があります。
- 過去に子宮外妊娠したことがある
子宮外妊娠の既往がある方の場合、次の妊娠も子宮外妊娠のリスクが高まりますので、妊娠の経過観察には注意が必要です。
子宮外妊娠、異所性妊娠についてよくある質問
- 正所性妊娠、異所性妊娠、子宮外妊娠の関係は?
正所性妊娠とは受精卵が正常な子宮内膜に着床した妊娠のことです。異所性妊娠とは受精卵が正常な子宮内膜以外に着床した妊娠のことで、正所性妊娠以外はすべて異所性妊娠となります。異所性妊娠は子宮内の異所性妊娠と子宮外の異所性妊娠があり、子宮外異所性妊娠が子宮外妊娠となります。
即ち、子宮外妊娠とは受精卵が子宮外に着床した妊娠のことになります。
正所性妊娠 99% | 正常な子宮内膜に妊娠 |
異所性妊娠 1% | 子宮内の異所性妊娠 2% |
子宮外の異所性妊娠(子宮外妊娠) 98% |
わかりやすく説明すと、全妊娠では1%の確率で異所性妊娠がおこり、その異所性妊娠うち98%は子宮外妊娠となります。
- 子宮外妊娠の診断はなぜ重要なのですか?
子宮外妊娠に気付かずに放置すると、腹腔出血、急性腹症、出血性ショックを起こして生命にかかわる症状に発展することがあるからです。 - 妊娠検査薬で子宮外妊娠はわかる?
妊娠検査薬で子宮外妊娠かどうかをご自身で判断することはできません。NIPT(NonInvasive Prenatal genetic Testing新型出生前検査)でもわかりません。
ヒト絨毛性ゴナドトロピンhuman Chorionic Gonadotropin(hCG) の尿検査と血液検査では、正常の妊娠と子宮外妊娠の区別なく陽性判定を示すため、妊娠状態が子宮外妊娠の場合でも、妊娠検査薬で陽性判定になります。
正しい妊娠状態を確認するために、hCG(尿中・血中)の検査と超音波検査を経時的に観察する事が必要です。妊娠しているとわかったらなるべく早めに医療機関を受診して、医師の診察を受けるようにしましょう。 - 子宮外妊娠は自分でわかる?
妊娠検査薬や自覚症状だけで子宮外妊娠の判断をすることはできません。悪阻(つわり)、少量の子宮出血、下腹部痛は、正常妊娠の方でも同様に生じます。自覚症状はない場合もあります。自己判断は大変危険ですので、妊娠していることがわかったら、なるべく早く医療機関を受診して、尿検査やエコー検査(超音波検査・経膣超音波検査)、必要に応じて血液検査などを受けて、医師に診断してもらうようにしましょう。 - 子宮外妊娠を疑う症状はなんですか?
・妊娠5週~6週の子宮外妊娠の初期症状は腹痛と少量の性器出血ですが、正常な妊娠初期の症状も軽いお腹の痛みと子宮不正出血で、症状が類似しているため、症状だけでは子宮外妊娠の診断はできません。
・妊娠6週~7週になると、下腹部痛が強くなり、正常妊娠ではないことが疑われます。産婦人科クリニックでの超音波検査とフォローアップが重要になってきます。 - 子宮外妊娠が疑われるときの対処法は?
妊娠の尿検査が陽性で、超音波検査で子宮内に胎嚢を認めない時は子宮外妊娠を疑う必要性があります。血液hCGと超音波検査でフォローアップします。 - 異所性妊娠、子宮外妊娠の確定診断は?
子宮外または子宮内の異所性に胎嚢が確認できれば確定診断となります。超音波検査で確認できないときはCTやMRIの画像検査を行うこともあります。
- 異所性妊娠、子宮外妊娠になった後でも妊娠はできるの?
子宮外妊娠の治療後の妊娠は子宮外妊娠の再発リスクは高いものの、自然妊娠・出産されているケースは少なくないです。卵管の状態が悪い、また治療により両卵管を切除した状態でも体外受精により妊娠できる可能性もあります。次回の妊娠が、正常妊娠であれば妊娠継続が可能です。
[注] 子宮外妊娠の症状
注意すべき異所性妊娠と治療方法
-
- 子宮頸管妊娠
子宮頸管は正常な子宮内膜が乏しく血管が豊富なため、頸管妊娠は大出血を引き起こす可能性があります。子宮頚管妊娠が疑われる場合は、大出血に対して迅速に対処できる設備の整った大病院での処置が求められます。動脈塞栓術等の方法もあります。 - 帝王切開瘢痕部妊娠
現在、帝王切開によって出産をする人が増えいます。そのため、帝王切開瘢痕部妊娠には注意が必要です。既往の帝王切開手術歴のある女性は、超音波検査で胎盤の位置の確認を行うことが大切です。 - 着床場所不明の異所性妊娠
血液のhCGは陽性で増加しているのに、胎のうが確認できない場合があります。待機期間を過ぎても、超音波で確認できない時は、検査と治療目的に腹腔鏡で腹腔内を精査する必要があります。 - 中絶手術後の存続絨毛症、異所性妊娠存続症
手術が終わったにも関わらず、hCG値の低下が遅いこともあります。腹腔内に絨毛が再着床することもあります。 - 子宮内外同時妊娠(正所異所同時妊娠)
確率は極めて低いですが、可能性として有りうることを念頭に置いておく必要があります。 - 異所性妊娠、子宮外妊娠の治療法
待機療法、手術療法、薬物療法、動脈塞栓術、等があります。
- 子宮頸管妊娠
<待機療法>hCGに低下傾向がみられる場合は、自然に体内に吸収され治癒することを待機する方法です。超音波検査、hCG定量検査の値をみながら、経過を観察していきます。
<手術療法>卵管切除法と卵管温存法があります。現在では腹腔鏡手術にて卵管切除術を行うことが多いですが、大量出血によるショック状態の場合、開腹手術が選択されることもあります。
卵管温存手術の場合は、卵管切開術を行いますが、再発の危険性があります。
<薬物療法>着床部位不明の異所性妊娠や異所性妊娠存続症、存続絨毛症の場合には、メトトレキサートの点滴靜注を行いますが、治療が長期化する傾向にあります。切除が難しい部位の場合は、メソトレキセートの局所投与が行われることがあります。