ピルの種類、効果、使用法、副作用について理解することが大切です。
- ピルの基礎知識
- ピルの種類と飲み方
- ピルの費用と購入先
- ピルが治療効果を発揮する仕組み
- ピルに期待できる避妊以外の効果
- ピルの服用で起こりうる副作用
- ピル服用時の注意点
- 特殊なピルのアフターピルとセラゼッタ
- ピル以外の避妊法と中絶
- ピルに関するよくある質問
ひとりで悩まずご相談ください
03-3408-5526ピルの基礎知識
ピルには使用目的によって、「自費の経口避妊薬ピル」と「保険の治療目的ピル」の2種類に分けられます。両者に含まれている女性ホルモン剤の成分は同じですが、使用目的が異なります。海外では同一のピルとして扱われていますが、日本では国民皆保険制度のため自費と保険を明確に区別して使用されます。
自費診療ピルと保険適応ピル
同一の成分ですが、自費診療のピルは主に経口避妊薬ピルで、保険適応ピルは月経困難症などの病気の治療に用いられるピルです。
経口避妊薬ピルはきちんと服用することで、高い避妊効果が期待できます。
保険適応ピルも同様に、生理痛や子宮内膜症における疼痛の症状を軽減することができます。
[注] ピルの効果
ピルの意味
ピルとはもともと丸い薬のことで、飲む避妊薬として使用されてきました。飲み忘れなければ高い避妊効果が期待できます。
<参考:経口避妊薬がピルと呼ばれるようになった経緯>
最初に作られた避妊薬剤はゼリー状のものでした。このゼリー状のものを膣内に塗布して避妊を行っていましたが、これはとても使いにくくて精度の低いものでした。その後に、飲む避妊薬が登場して便利で精度もよくなりました。それが丸い薬だったのでピル(pill丸薬)と言われていました。これが後に、経口避妊薬をピルと呼ぶようになった、といわれています。
今では、「ピル」とは飲む避妊薬すなわち「経口避妊薬」の意味で広く使用されています。
ピルの成分
経口避妊薬ピルも保険適応ピルも、成分は卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類の女性ホルモンを主成分とする合剤です。
「卵胞ホルモン」には、天然の卵胞ホルモンのエストロン、エストラジオール、エストリオールがあり、人工的に作られたものはエチニールエストラジオールといいます。両者を総称してエストロゲンといいます。
「黄体ホルモン」は、内因性のホルモンはプロゲステロンといい、合成のホルモンはプロゲスチンと言います。総称してプロゲストーゲンと呼ばれます。以下の卵胞ホルモンと黄体ホルモンの呼び方をご参照ください。
[表]卵胞ホルモンと黄体ホルモンの呼び方
卵胞ホルモン | 黄体ホルモン | |
---|---|---|
天然ホルモン | エストロン(E1) エストラジオール(E2) エストリオール(E3) |
プロゲステロン |
合成ホルモン | エチニルエストラジール | プロゲスチン |
総称 | エストロゲン | プロゲストーゲン |
経口避妊薬ピルと保険適応ピル
上記したように、ピルは使用目的によって自費の経口避妊薬ピルと治療目的の保健適応ピルの2つに分類されます。
日本は国民皆保険制度のため、自費診療と保険診療を区別して取り扱います。日本の産婦人科領域では自費の経口避妊薬ピルはOCと、治療目的の保険適応薬ピルはLEPとよばれ、両者を合わせた女性ホルモン剤をOC・LEP(オーシーレップ)と呼んでいます。
[略語解説]
OC=oral contraceptive(経口避妊薬)
LEP=low dose estrogen-progestin(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)
[参考文献]「OC・LEPガイドライン2020年度版」公益社団法人 日本産科婦人科学会/一般社団法人 日本女性医学学会 編集
ピルの種類と飲み方
ピル(OC)ピルには様々な種類があります。上述したように、大きくは自費診療のピルと保険適応ピルに分けられますが、ホルモンの種類と量によっても違いが生じます。
その他にも、緊急避妊薬としてのアフターピルや副作用を低く抑えたセラゼッタ等があります。下記見出しをご参照ください
[注] 経口避妊薬ピル
[注] 保険適応ピル
[注] ピルの種類
ピルの種類
次の表に、2021年3月現在販売されている自費と保険のピルを表示します。
[表]2021年3月現在販売されている自費と保険のピル
製品名 | 錠数 | 服用開始日 | 配合パターン (1周期あたりの総量mg) 相性 |
相性 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
エストロゲン | プロゲスチン | |||||
自費OC | ||||||
シンフェーズT28錠 | 28 | Sundayスタート | EE=0.735 | NET=15.0 | 三相性 | |
アンジュ21錠 アンジュ28錠 |
21/28 | Day1スタート | EE=0.680 | LNG=1.925 | ||
トリキュラー21錠 トリキュラー28錠 |
21/28 | Day1スタート | EE=0.680 | LNG=1.925 | ||
ラベルフィーユ21錠 ラベルフィーユ28錠 |
21/28 | Day1スタート | EE=0.680 | LNG=1.925 | ||
マーベロン21錠 マーベロン28錠 |
21/28 | Day1スタート | EE=0.630 | DSG=3.15 | 一相性 | |
ファボワール21錠 ファボワール28錠 |
21/28 | Day1スタート | EE=0.630 | DSG=3.15 | ||
保険LEP | ||||||
ルナベル配合錠LD ルナベル配合錠ULD |
21 | Day1~5スタート | EE=0.735 EE=0.420 |
NET=21.0 NET=21.0 |
||
フリウェル配合錠LD フリウェル配合錠ULD |
21 | Day1~5スタート | EE=0.735 EE=0.420 |
NET=21.0 NET=21.0 |
||
ヤーズ配合錠 | 28 | Day1スタート | EE=0.480(24日間) EE=2.4(120日間) |
DRSP=72.0(24日間) DRSP=360(120日間) |
||
ヤーズフレックス配合錠 | 28 | Day1スタート | EE=0.480 | DRSP=72.0 | ||
ジェミーナ配合錠 | 21/28 | Day1~5スタート | EE=0.420 | LNG=1.89 |
[略語]
・エストロゲン
EE:エチニルエストラジオール
・プロゲスチン製剤
NET:ノルエチステロン
LNG:レボノルゲストレル
DSG:デゾゲストレル
DRSP:ドロスピレノン
[一相性と三相性の違い]
ピルは実薬(錠剤)に含まれる女性ホルモン量によって2種類に分けられます。
一相性:実薬に含まれるホルモン量がすべて一定。
三相性:実薬に含まれるホルモン量が、生理周期に合わせて3段階に調節されていて、より自然なホルモンバランスに近いのが特徴です。
4種類のピルを下記に例示します。
[21錠タイプ、一相性]
1シート21錠タイプの場合は、22~28日の期間は服用しない休薬期間となります。
[28錠タイプ、三相性]
1シート28錠タイプの場合は、毎日服用し続けます。お薬の有効成分は21錠分だけで、3段階で薬の量が変わる三相性です。残りの7錠はプラセボといって有効成分が入っていない偽薬です。毎日の服用を習慣づけるためのものです。プラセボを飲んでいる間は、休薬期間となります。
[24錠タイプ、一相性]
一相性が24日続き、プラセボが4日と短いので生理痛の期間も短くなります。
[フレックスタイプ、一相性] フレッキシブルに服用日数を変えられます。
プラセボがないので生理痛がなくなります。
最長で120日連続服用が可能なお薬です。服用中に起こる出血に合わせて休薬期間となります。最長で服用した場合、生理が1年間に約3回程度と、出血回数と出血日数の大幅な減少が期待できます。
[参考]「OC・LEPガイドライン2020年度版」
公益社団法人 日本産科婦人科学会/一般社団法人 日本女性医学学会 編集
ピルの飲み方
ピルの飲み始めは、生理が来てから最初のSundayスタート、生理開始のDay1スタートまたはDay1~5スタートスタートとなります。一般的には生理開始から5日以内に服用することが必要です。
Sundayスタートの利点は生理が毎月4週目の月か火に来るので、計画が立てやすくなります。
飲み始め3ヵ月以内に静脈血栓症などの副作用が多いので注意しましょう。
[注] ピルの飲み方
ピルの費用と購入先
ピル(OC)避妊薬ピルは自由料金で、保険適応ピルは保険料金になります。
ピルの費用
当院での避妊薬ピルの値段は、初診の場合は初診料、処方料、検査料、税込み、を全て含んでの料金になります。再診料は無料となります。
保険適用ピルは3割負担の保険料金になります。
ピルの購入先
現在日本国内では、ピルを購入するためには医療機関で医師の診察を受けることが必要です。ピルは市販されていませんので、市販薬を取り扱うドラックストアでピルを購入することは出来ません。薬局であっても、医師の発行した処方箋がないと購入することは出来ません。
ネット経由での海外製品の購入は、商品の品質とアフターケアに問題があることがあります。
インターネットでの個人の通販サイトからの購入はできるだけ避けた方が良いです。海外製のピルで国内では認可されていないピルの場合は、安全に届けられなかったり、偽物で適切な効果が得られない恐れもあり、副作用に対するフォローアップも充分ではありません。安全性や有効性の確認ができず服用にはリスクを伴います。
ピルが治療効果を発揮する仕組み
経口避妊薬ピル、および保険適用ピルの薬効薬理
経口避妊薬ピル(OC)の避妊メカニズム
避妊薬ピルの作用機序は排卵抑制作用を主作用とし、子宮内膜変化による着床阻害作用及び頸管粘液変化による精子通過阻害作用等により避妊効果を発揮します。これを「偽妊娠作用」とも言います。
[注] 経口避妊薬トリキュラー21,28 取扱説明 バイエル薬品株式会社
<妊娠が成立する仕組み>
生理が始まって10日くらいすると、視床下部のGnRHホルモンの刺激で下垂体ホルモン(LH,FSH)が出て、卵胞から卵胞ホルモンが分泌され。LHサージによって排卵して卵子を排出し、射精によって侵入した精子と合体して受精します。受精卵は成長発育し、子宮内膜に着床して妊娠が成立します。
<卵胞ホルモンと黄体ホルモンの働き>
受精卵が着床した後は、卵巣からでる卵胞ホルモンと黄体ホルモンの働きで妊娠が維持されます。
<避妊のメカニズム>
妊娠が続行している間は、卵胞ホルモンと黄体ホルモンが分泌され、下垂体ホルモンが減少して排卵が抑制されます。この妊娠状態と排卵抑制状態を人工的に作りだすのがピルで、これを「偽妊娠療法」と言います。
<ピルの服用>
ピルは1日1回服用し、毎日忘れずに飲み続ける事で避妊効果が期待できます。避妊効力が出始める時期は服用を始めてから1週間くらいです。
また、下垂体ホルモンの低下によって、子宮頸管粘液は変化して精子の侵入を妨げ、子宮内に精子が入りにくくなり受精と着床を難しくすることも避妊に有効になっています。
[注] 経口避妊薬ピル
保険適用ピル(LEP)の作用機序
保険適応ピルの治療効果は、排卵抑制作用及び子宮内膜増殖抑制作用によって、プロスタグランジン等の過剰産生を抑制するにより子宮収縮運動を抑制し、月経困難症や子宮内膜症における疼痛などの症状を軽減すると考えられています。
[注] ヤーズフレックス配合錠 バイエル薬品株式会社
[注] 保険適応ピル
ピルに期待できる避妊以外の効果
ピルの主効用は避妊ですが、避妊薬ピルと保険適応ピルは、配合はエストロゲンとプロゲスチンの合剤で薬剤は同じです。したがって避妊薬ピルにも治療薬ピルと同様の効果が期待できます。これを副効用といい、女性にとって様々な良い影響があります。
生理関連のトラブルに対するピルの副効用
<月経困難症の改善>
低用量ホルモン剤の投与で、子宮内膜の増殖を抑制し、子宮内膜から痛みの原因物質プロスタグランディン(プロスタグランジン)の産生を抑制することが月経困難症の軽減になります。
女性ホルモン薬の服用は機能性月経困難症における月経痛を軽減します。器質性月経困難症の生理痛も軽減し、連続投与は周期投与よりも月経痛を有意に軽減します。
<経血量の減少>
低用量ホルモン剤が子宮内膜の増殖を抑制することが理由です。過多月経、貧血の改善が期待できます。
<PMSとPMDDの改善>
PMS(月経前症候群)、PMDD(月経前不快気分障害)は月経前後に生じる精神症状を主体とした病的症状のことです。その大部分は軽症ですが、原因は現時点では不明です。
PMDDの薬物療法として選択的セロトニン受容体阻害剤が有効で、ドロスピレノン含有のピルはPMDDを軽減して有効といわれています。
<月経困難症と月経前症候群の違い>
「月経困難症」とは月経期間中に月経に随伴して生じる痛みを主体とした病的症状のことです。その内容は、月経痛、下腹部痛、腰痛、頭痛、嘔気、疲労、等があり、子宮内膜症や筋腫などの器質的な疾患を原因とする場合があります。
「月経前症候群」とは月経前の黄体期の高温相に何らかの症状をきたし月経と共に消失する精神症状を主体とする病的症状です。月経前緊張症ともいわれ、「月経前不快気分障害」はその重症型といわれます。
<ニキビの改善>
尋常性座創(にきび)はアンドロゲンの影響で皮脂分泌が亢進することが要因の一つです。低用量ホルモン剤のプロゲスチンに抗アンドロゲン作用があるため、ニキビなどの肌荒れや多毛症の改善に期待できます。
<生理日の移動>
ピルは生理日を移動することができます。女性が旅行や試験などのイベントのライフスタイルのタイミングにあわせて、生理予定日を変更することができます。
生理不順、月経周期、月経回数を自分でコントロールしやすくなり予定をたてやすくなります。
良性疾患に対するピルの副効用
<子宮内膜症、子宮腺筋症>
低用量ホルモン剤の服用で子宮内膜の増殖が抑えられるため子宮内膜症の痛みの改善が期待できます。
下垂体機能のGnRHアゴニストと同程度の効果を期待できます。
ピルは子宮内膜症に伴う月経困難症を軽減します。
子宮内膜症に伴う月経時以外の下腹部痛、腰痛を軽減します。
連続投与は子宮内膜症に伴う月経痛、骨盤痛、排便痛、性交痛を軽減し、女性特有の悩みを改善してくれます。
卵巣子宮内膜症、直腸子宮内膜症、膀胱子宮内膜症の病巣縮小に効果が期待できます。
卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレートのう腫)に対する手術後の継続投与により、再発率は低下します。
効果は、周期投与よりも連続投与のほうが高いです。
悪性腫瘍(がん)に対するピルの副効用
<卵巣がん>
ピルの服用によって排卵機能が抑制されるため、卵巣ガン発症のリスクを下げるといわれています。
服用期間が長くなると卵巣がんのリスクはより低下するともいわれています。
最近の知見では、低用量ホルモン剤ピルの中止後も、卵巣癌発生のリスク低下効果が持続するといわれています。服用期間が1年間を超えると有意にリスクが低下し、服用期間とリスク低下には相関があることが報告されています。
<子宮体がん(子宮内膜がん)>
子宮内膜細胞は、エストロゲンの作用で増殖するがプロゲスチンはその効果に拮抗するため、子宮体癌のリスクを低下させると考えられています。
服用期間が長くなると、子宮体ガンのリスクはより減少します。
ピルの服用中止後も体癌リスクの低下効果の持続が期待できます。
<大腸がん>
エストロゲンの投与が大腸癌リスクを低下させることが知られていますが、ピルの投与によっても大腸ガン(結腸癌、直腸癌)のリスクが低下するとされています。 大腸がんリスク低下の正確な機序は不明です。
[注] ピルの効果
ピルの服用で起こりうる副作用
ピルは女性の強い味方ですが、薬剤ですから副作用や有害事象もあります。服用にあたっては、ピルの効能だけでなくデメリットも正しく理解することが大事です。
ピル市販後使用成績調査では11.4%に副作用が認められ、主な副作用は、不正子宮出血(3.8%)、悪心(3.4%)、乳房痛(1.1%)、嘔吐(0.9%)、頭痛(0.7%)でした。
重篤な副作用として動静脈血栓塞栓症については確実な知識を持って服用することが必要です。
動静脈血栓塞栓症のリスク
ピル服用による副作用で注意しなければならないものに、重大な副作用として動静脈血栓塞栓症があります。正確な発症率は不明です。
血栓とは血管内で血液が固まって塊となり血管を詰まらせてしまう疾患です。
塞栓症とは詰まった血液の塊が他の臓器に飛ぶことです。ピル服用の上で最も注意を要する疾患です。
動脈血栓症は動脈に血栓が詰まる病気で、心筋梗塞、脳梗塞につながる病気です。
静脈血栓症は足の静脈に血栓が詰まって深部静脈血栓症を発症したり、血栓が肺に塞栓して肺塞栓症になることがあります。
血栓症が疑われる症状として、下肢の急激な疼痛・腫脹・しびれ・発赤・熱感、突然の息切れ、胸痛、頭痛、四肢の脱力・麻痺、言語障害、急性の視力障害、嘔気、嘔吐等があります。症状が疑われる時は服用を中止することが大切です。
喫煙は血栓症のリスクをより高めてしまう原因となりますので禁煙をおすすめします。喫煙者は普通のピルは服用できません。
服用中に、急激に体重増加した場合、ふくらはぎに痛みなどの症状がある場合には血栓症を疑って、服用をストップして専門医を受診してください。
ピルによる血栓症で亡くなった人の割合は10万人に1人です。当院ではピルを服用している患者様には、異常や問題がないかどうか、血圧、体重の検査は頻繁に行い、年に一度は採血を実施してリスクのチェックと管理を行っております。
当院では、血栓症の一因である卵胞ホルモン(エストロゲン)を配合していないピルを処方しています。予約来院しておたずねください。
[注] ピルの副作用
[注] ヤーズ配合錠 バイエル薬品株式会社
その他の副作用
5%未満の確率で発疹、蕁麻疹が生じる事があり、ピル薬剤にアレルギー反応や過敏症のある方は、ピル投与を中止します。
色素沈着があるときは、長時間太陽光を浴びない様に注意します。
ピルの服用により、体内のホルモンバランスが崩れて、不正性器出血、嘔気、めまい、気分変調、体重増加、乳房緊満、胸の張りなどのマイナートラブルが発生することがあります。
不正出血、吐き気、頭痛、むくみ、下痢等はほとんどの場合は軽度の症状で、服用を続けている間に数ヶ月で落ち着いて緩和され大丈夫になるケースが多いです。
大きな子宮筋腫や悪性腫瘍がないことを確認して、ホルモン含有量の少ないピルに変更を勧める場合もあります。
数ヶ月服用を継続しても副作用の症状が緩和されない場合や、ご心配な方は予約受診してご相談ください。詳しくご説明のお話しをしております。
乳がんリスク
低用量ホルモン剤の服用が乳がんの発症リスクを増加させるかどうかは不明です。
現在乳がんである女性にはピル投与は禁忌です。
乳がんの家族歴を有する女性には慎重投与が必要です。
子宮頸がんリスク
5年以上の長期的にピルを服用すると、わずかに子宮頸がんのリスクが上昇する可能性があります。
ピルを服用することで、HPVウィルスの排除率が低下することからHPV持続感染のリスクが高まることが原因と考えられています。
ピルの服用有無に関わらず、定期的に子宮頸がん検診、婦人科検診、乳がん検診を受けることをおすすめしています。
[注] 子宮頸がん合併妊娠
ピル服用時の注意点
ピルは服用する前に問診表チェックがあります。再開する場合も同様です。ピルは同じクリニックで購入を続け健康状態をチェックしてもらいましょう。途中に他院で提供してもらうのは避けた方がいいです。
ピルの服用を開始するタイミング
ピルの開始は月経開始1日目が望ましいが、月経周期5日までに服用を開始すれば追加の避妊法は必要ないとされています。月経周期5日目を過ぎてピルを開始した場合は、他の避妊方法を用いるか、7日間連続してピルを服用するまでは性交は避けること。
ピルを飲み忘れた場合の対処法
1錠の飲み忘れに気付いた場合は、なるべく早く飲み忘れた錠剤を服用し、残りの錠剤は予定通りに服用する。同じ日に2錠服用してもいいです。
2錠以上の飲み忘れに気付いた場合は、飲み忘れた錠剤の直近のものをなるべく早く服用し、残りの錠剤を予定通りに服用する。同時に7日以上連続して服用するまではコンドームを使用するか、または性交を避ける事が必要です。
ピル服用中に無月経になった時は?
ピル内服中に無月経になった時は、ピルの服用を続けながら妊娠しているかを確認します。妊娠が除外された場合は、無月経や消退出血がみられなくても問題ありません。
[注] ピル内服中の無月経
他の薬剤との飲み合わせ
併用禁忌の薬剤として、C型肝炎治療薬のヴィキラックスがあります。機序は不明ですが、GPT上昇が高頻度で認められ肝機能が悪化するためです。
ピルとの飲み合わせに注意が必要なサプリメントにセントジョーンズワート(不眠、抗うつ薬)があります。その他飲み合わせが禁止されているお薬の服用がないかどうか、必ず確認を行ってください。
重大な副作用の血栓症について
年齢、喫煙、肥満、家族歴等のリスク因子の有無にかかわらず血栓症があらわれることがありますので、血栓症が疑われる症状があらわれた場合は、服用を中止するなどの適切な処置が必要です。
血栓症が疑われる症状として:下肢の疼痛・腫脹・しびれ・発赤・熱感、頭痛、嘔気、嘔吐等があります。
性感染症のリスク
ピルは、HIV感染症(エイズ)及び他の性感染症(例えば梅毒、性器ヘルペス、淋病、クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、膣トリコモナス症、B型肝炎等)を防止するものではありません。性病感染予防には正しくコンドームを使用することが有効です。ピルとコンドームの併用は、より確実な避妊と性感染症の予防を同時に行うことが可能です。
必要に応じて、性感染症検査の実施をすることが大切です。
[注] 性感染症とは
定期検診の必要性
定期的に、血圧、体重の他に、血液検査、乳がん検診、婦人科検診を受けることは基本的に大切なことです。
ピル服用を継続することで、起こりうる重大な副作用に対して早期発見・早期対応するために定期的に検査を行っています。
服用中に気になる体調変化や症状があった場合は、早めに処方された病院・診療所で医師に相談し対応することが重要です。
ピル服用中の体重増加、血圧の上昇、ふくらはぎの痛みやむくみ、意識の障害、腹痛・胸痛・頭痛、息苦しさ、視野の縮小、舌のもつれなどの症状には注意が必要です。
[注] トリキュラー錠21 28錠 バイエル薬品株式会社
[注] ピルの副作用 をご参照ください。
ピルを処方できない禁忌の例(一部)
・ピルの成分に対して過敏性素因のある女性
・乳がん、子宮内膜癌、子宮頸がん疑いの人
・分娩後3週未満(VTEのリスクがある)
・分娩後6週未満で授乳中の方
・35歳以上で1日15本を超える喫煙者
・静脈血栓症の既往
・脳卒中の既往、乳がん既往歴
・高血圧、血管病変、虚血性心疾患の既往
・長期間の安静臥床を要する大手術
・片頭痛、その前兆を有する者
・20年を超える糖尿病
・肝硬変、肝腫瘍、急性ウィルス性肝炎
WHO適格基準、その他より
[注]経口避妊薬ピルをご参照ください。
特殊なピルのアフターピルとセラゼッタ
ピルの飲み忘れ、コンドームの破損、IUDの脱落、などが生じた場合の、緊急避妊薬としてアフターピルがあります。また、ピルの副作用を少なくするためにエストロゲン剤の含まれていないセラゼッタというピルもあります。
アフターピルについて
夜にセックスをして翌朝に避妊をする薬剤としてモーニングアフターピルと言われていましたが、現在では昼夜を問わず使用されるため、単にアフターピルや緊急避妊ピルと言われています。
アフターピルは、性行為後3日以内に服用する事で、排卵、受精、着床のいずれかを防ぐ緊急避妊薬剤の効果が期待できます。
無防備なセックスをしてしまった後、決められた時間内に服用します。
アフターピルは排卵が行われていない時は排卵を止め、排卵後であれば、受精と着床を障がいして緊急的に避妊を行います。
アフターピルはセックスの後、早く服用すればするほど高い確率で避妊する事が出来ますので、できるだけ早く服用することをおすすめします。
以前は副作用の強い中用量ピルのプラノバール等を2錠服用し、12時間後にもう一度2錠服用する「ヤッペ法」が採用されていました。嘔吐などの副作用が強いため、現在ではホルモン含有量が少なく、ジェネリック医薬品レボノルゲストレルの「ノルレボ錠1,5mg」1回の服用で、内服しやすく避妊効率もよくなっています。
アフターピルを服用後、お薬が吸収される前に嘔吐してしまった場合、避妊の失敗率が上がります。
アフターピルで避妊に成功したかは、生理による消退出血があって確認できます。服用後に妊娠する可能性もありますので、避妊を確認できるまではセックスは避けたほうが望ましいです。
当院でアフターピルをご希望の方は、来院前に電話予約して診療時間内にご来院ください。簡単な説明やお話し等を済ませて、医師から処方を受ける事が出来ます。
中絶手術を避けるためにも避妊はきちんとしましょう。
[注] アフターピルとはをご参照ください。
セラゼッタについて
セラゼッタは、血液凝固作用の強いエストロゲンをはぶいてプロゲスチンだけで避妊をする経口避妊薬ピルです。エストロゲンを服用しない方がいい人、例えば、タバコを吸う方、片頭痛のある方、高血圧の方、40歳以上の方にお勧めの避妊ピルになります。
日本国内では販売されていないので、輸入品となります。
[注] セラゼッタについて
ピル以外の避妊法と中絶
ピル以外にも様々な避妊方法があります。
ピル以外の避妊法
例えば、コンドーム、膣外射精(性交中断法)、オギノ式避妊法(リズム法)、黄体ホルモン放出IUS(ミレーナ)、銅付加IUD挿入、不妊手術(パイプカット、卵管結紮)、殺精子剤、アフターピル等、があります。
パール指数とは?
パール指数とは、100人の女性が各種の避妊法を開始して1年間での避妊失敗率%(妊娠率%)のことです。パール指数が小さいほど妊娠率が小さく、避妊効果が高いことになります。
理想的な使用をした場合のパール指数
避妊方法 | パール指数(%) |
---|---|
パイプカット | 0.10 |
ミレーナ | 0.2 |
経口避妊薬ピル | 0.3 |
リズム法 | 0.4~5 |
卵管結紮 | 0.50 |
銅付加IUD | 0.6 |
コンドーム | 2 |
避妊せず | 85 |
理想的な使用法を行ったときは、パール指数はピルで0.3 %、ミレーナ挿入は0.2%、コンドームで2%、避妊をしなかった場合は85%となっています。
[注] 経口避妊薬について 富士製薬工業
[注] OC全般と避妊法 日本産婦人科医会
[注] 経口避妊薬ピル
ピルと中絶手術
経口避妊薬ピルは日本ではまだ副作用などのマイナスイメージの方が多くあるかもしれませんが、ピルを正しく理解すると多くのメリットがあります。女性が能動的にできる避妊方法として、望まない妊娠による身体と心に負担のある人工妊娠中絶手術を避けることができます。
女性の主体的な避妊法としてのピル服用は、当院で人工妊娠中絶手術を受けた後の患者様にもおすすめしております。
ピルOCは治療薬LEPと同様の働きがあるので、ピルは避妊効果以外にも、様々な副効用があり女性が快適に生活するためにピルを活用することは有益です。
女性は毎月、月経や排卵日があり妊娠をするためには必要な体の大切な働きですが、それに伴う辛い症状に悩まされている方は少なくありません。
ピルの服用は生理痛の改善や生理周期の安定など辛い症状が緩和される一方で、それらの症状の裏には卵巣機能不全、子宮筋腫、悪性腫瘍などの病気が隠れていることもあります。何か気になる症状がある場合は、産婦人科やレディースクリニックで相談して検査を受ける事がとても大切です。
当院でもピル処方の前には、受診していただきお話しを聞かせていただいておりますので、心配な症状がある場合にはお申し出ください。
避妊に失敗して「望まない妊娠」をした場合は、中絶手術を行う病院選びが大切です。初期中絶と中期中絶では手術方法が異なります。
診療時間内のご予約はお電話かWEB予約をお願いします。休診日や診療時間外の場合は、 24時間予約可能なWEB予約をご利用ください。
[注] 避妊に失敗
[注] ピル飲み忘れ
[注] 病院選び
[注] 中絶の基礎知識
[注] 中絶手術の方法(妊娠週数別)
ピルに関するよくある質問
-
ピルはなぜ避妊できるのですか。
-
主な避妊機序は「排卵抑制作用」です。そのほかに、子宮内膜変化による「着床阻害作用」及び頸管粘液変化による「精子通過阻害作用」等により避妊効果を発揮します。「偽妊娠療法」とも言われます。
-
避妊効果はどれくらいですか?
-
飲み忘れなく規則的にきちんと内服した場合は、その結果は100%ではないですがパール指数0.3%(避妊失敗率%)で避妊できます。
-
ピルはいつから服用を開始したらいいですか?
-
服用開始は月経開始から5日以内までに行います。
-
ピルはどこで購入できますか?
-
産婦人科の医療機関の外来で入手できます。オンライン診療をやっているところもあるようです。ネットで検索してみましょう。
-
何歳まで服用できますか?
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健常者であれば、避妊薬ピルは初経から閉経まで処方できるのが基本です。しかし、ピルには血栓症等の重度の副作用を起こす可能性があるため、年齢、既往歴、家族歴、BMI,高血圧、糖尿病、心臓病等を考慮する必要性があります。
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未成年は服用できますか?
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初経初来後から開始できますが、ピルの服用は骨成長と骨密度に影響を及ぼすため、未成年者の場合はメリットとデメリットを考慮して慎重に投与する必要があります。
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アフターピルとは?
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性交渉後72時間以内に服用することで、高い確率で妊娠を阻止することができる薬剤のことです。
[注] アフターピルとは
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ミニピル(セラゼッタ)とは?
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血栓症を起こす原因となるエストロゲンが入っていないプロゲスチンだけで避妊をする薬剤です。
[注] セラゼッタ(ミニピル)
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ピルを飲み忘れた時の対処法は?
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1錠の飲み忘れに気付いた時は、飲み忘れた錠剤をなるべく早く服用し、残りの錠剤は通常通りに服用します。追加の避妊法は必要ないといわれています。 2錠以上の飲み忘れに気付いた時は、飲み忘れた錠剤のうち直近のものを早く服用し、残りの錠剤は予定通りに服用します。ただし、7日以上連続して服用するまでは、コンドームなどの他の避妊方法を併用します。
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ピル服用中でも新型コロナウィルスワクチン接種はできますか?
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接種時に発熱なく、健康状態にも問題なく日常生活を送れているのであれば、ワクチン接種前後にピル服用を中止する必要はないと考えられています。
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ピル服用中に新型コロナウィルスに感染した場合は?
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新型コロナウィルスに感染した場合は、血栓症が起こりやすくなると言われています。コロナ感染が疑われた場合はピル服用を中止して、医療機関にご相談ください。
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不正出血が起こった時は?
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ピル服用中に20%の頻度で異常子宮出血を経験すると言われています。服用を継続すると次第に減少することが多いです。3周期服用しても少量の出血が続く場合は、産婦人科で子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣腫瘍、悪性等の精査をして、異常なければ、ピルの種類を変更することも考えてください。
[注] ピルの不正出血
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長期間ピルを服用した後は、妊娠しにくくなりますか?
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長期間に服用しても中止後の妊孕性には影響しません。
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服用中止後に排卵回復はいつ頃おこりますか?
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ピル服用中止後、次の生理は3ヵ月以内に生じます。
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妊娠初期の人工妊娠中絶手術後はいつからピルは服用できますか?
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手術直後から開始してよいという見解もありますが、手術の侵襲とホルモン自体の影響のため3週間程あけることが望ましいです。
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分娩後はいつからピルを服用できますか?
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授乳婦は分娩後6カ月後から服用を開始します。非授乳婦は、VTEの危険因子がなければ産後3週間以降から、VTEの危険因子がある場合は産後6週間ごから服用可能です。