中期中絶の基礎知識〜費用と手術の流れ〜  

中期中絶の基礎知識〜費用と手術の流れ〜   2024.10.02

人工妊娠中絶手術を受ける方は様々な事情の違いがあり、手術を受けることを選択された時期が「妊娠初期」を経過して「妊娠中期」になる場合もおありかと思います。妊娠中絶の手術可能な期間は妊娠22週未満までと母体保護法という法律によって定められております。妊娠11週6日までの中絶は「初期中絶」、妊娠12週から妊娠21週6日までの中絶は「中期中絶」、と言われています。「中期中絶」は「初期中絶」と比べて、法律の問題、手術の方法、患者さんへの負担、などが異なりますので、「中期中絶」について、知っておきたい基礎知識と具体的な手術の流れについてご説明いたします。

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1.中期中絶の基礎知識と費用

「中期中絶」とは、妊娠12週から妊娠21週6日までに行われる中絶のことです。
妊娠して、22週未満に妊娠が終了することを、すべて「流産」といいます。妊娠22週というのは、その週数では赤ちゃんがお母さんの子宮の外では育たないと言われている一番小さい週数です。流産した場合に行われる処置を総称して「流産処置」といいます。

流産処置

妊娠12週未満の流産を「早期流産」、12週以降22週未満の流産を「後期流産」、と分類されます。流産は原因によって自然流産と人工流産に分けられ、人工流産が「中絶」になります。
妊娠12週未満の中絶を「初期中絶」、12週以降22週未満の中絶を「中期中絶」と分類し、「初期中絶」は「早期流産」に含まれ、「中期中絶」は「後期流産」に含まれます。中絶手術は母体保護法指定医を標榜している医療機関でのみ行うことができます。「中期中絶」は「初期中絶」にくらべて、精神的・身体的、経済的、手術手技に負担が大きくなります。

中期中絶の法律上の手続き、費用、出産育児一時金、手術の方法と流れについて解説いたします。

法律上の手続き

省令により、妊娠12週以降の「中期手術」(後期流産)では、「死産届」と「死産証書」を在住する地域の役所に提出しなければなりません。
これらを提出して、役所から「死胎火葬許可証」を発行してもらいます。これを火葬場に提出して火葬が行われ、埋葬されます。これらの法律上の手続きは専門の業者さんが行うことになります。当院では初期中絶、中期中絶とも、手術後の赤ちゃんは全例お寺にて永代供養をさせていただいております。

詳細は病院・医院でお問い合わせください。

中期中絶の費用

中絶手術の費用は、自費診療のため各医療機関によって異なります。
中期中絶の費用は初期中絶の費用に比べて割高になりますが、健康保険に加入している方の場合は、「出産育児一時金」の支給対象となります。
手術後に申請することによって一時金の支給を受けることができます。
申請方法の詳細は、当院担当よりご説明させていただきます。
詳細は、中絶費用の相場や内訳は? をご覧ください

「出産育児一時金」制度

「出産育児一時金」は健康保険に加入している人が、妊娠出産した場合、または出産以外にも、流産、早産、死産を経験した場合に、支給の対象となる助成金制度です。
「中期中絶手術」も出産と同様に、心身にも経済的にも、大きな負担となるため、健康保険の被保険者に「出産育児一時金」が支給されます。
詳細は、出産育児一時金制度 をご覧ください

中期中絶手術の方法と流れ

中期中絶手術の方法は、妊娠12週~14週までと妊娠15週以降では手術方法、手術の流れが大きく異なってきます。
12週~14週は、入院なしの日帰り手術となり、15週~21週までは入院となります。
詳細は、 当院の中絶手術の流れ をご参照ください。
妊娠15週以降の2日間に渡る「中期中絶手術」の方法と流れは次の様になります。1日目「初診・来院・受診」→「超音波検査・手術可能性の判断」→「処置についての説明」→「子宮頚管拡張材の挿入」→「入院」→(一泊)→2日目「子宮収縮剤投与による分娩様式」→「胎児・胎盤娩出」→「超音波ガイド下で子宮内容遺残確認」→「死産証書・死産届作成」→「退院・帰宅」へと進みます。
中期中絶手術では初期手術ではあまり問題とならなかった、子宮筋腫、前回帝王切開分娩、前置胎盤・低地胎盤、などの問題が生じてきます。
「中期中絶」手術法が「初期中絶」手術と大きく違うのは、前処置として子宮口を拡げる「子宮頸管拡張」と「子宮収縮剤の投与による出産様式」という2つの方法が加わることです。
(注)「中期中絶」も当院では、娠12週・13週と妊娠14週以降は手術方法が異なります。
次の章で、「1日目の子宮頸管拡張材の挿入」と「2日目の子宮収縮剤投与による分娩様式」について詳細いたします。

(注)手術の方法の詳細は妊娠週数と中絶手術方法をご参照ください。

2.子宮頚管拡張材の挿入

「初期中絶(早期流産)」の手術方法は、子宮内容除去術として当院では「掻爬法」ではなく子宮内膜にやさしい「吸引法」を採用しています。手術日に来院していただき、ほとんど痛みはなく、手術時間は数分で終了します。術前処置としての子宮口拡張は不要です。当日の日帰り手術で帰宅し、翌日よりお仕事可能です。
「中期中絶(後期流産)」で2日に渡る場合は、前日に子宮口拡張および子宮頸管熱化のための「子宮頸管拡張材の挿入」が必要です。

中期中絶手術の1日目の流れ

ご予約の上来院していただき、妊娠検査、超音波検査で、妊娠週数や妊娠の状態を確認します。子宮筋腫・内膜症・卵巣のう腫、母体の疾患の合併症の有無を調べます。前置胎盤・低地胎盤、子宮奇形、等の異常がないか精査します。
手術可能と判断されるときは、手術方法、副作用をご説明し、同意書に署名していただきます。術前準備、手術費用、料金、食事などについてご説明いたします。

子宮頚管拡張材の挿入

術前処置として「子宮頸管拡張材の挿入」を行います。子宮頸管拡張剤(ラミナリア)を子宮頸管に挿入すると、12時間ほどで体内の水分を吸収して使用前の2倍〜3倍に太くなります。ラミナリアは海藻の根を原料としており、水分を吸収して子宮頸管を拡張させ、頸管を軟化させる効果があります。妊娠週数と経産婦・未産婦によって、子宮頸管拡張材の本数と処置法は変わります。挿入後は生理痛様の痛みが生じますが、鎮痛剤の処方・内服と時間の経過で痛みは軽くなっていきます。1日目はこれで終了です。

(注)(注)中絶の前処置とは? を参照

3.子宮収縮剤投与による分娩様式

中期中絶手術の2日目は、手術日当日です。術前処置で挿入した子宮頸管拡張材を抜去し、子宮口が開大していることを確認します。次に子宮収縮剤を投与して陣痛を起こします。

子宮収縮剤投与による分娩様式

子宮収縮薬の薬剤を投与して人工的に陣痛を起こす分娩様式になります。出産と同様に、子宮から胎児と胎盤を娩出します。手術中は、モニター下に異常出血が起こっていないかなど出血量と過強陣痛に注意し、医師と看護師が連携して全身の状態を確認しながら進めます。
中期中絶手術は体への負担が大きいため、手術終了後は数時間院内で安静にしていただきます。病室は個室をご用意しておりますのでゆっくりお休みいただけます。
また休息後は、リラックスして過ごしていただけるように、医師判断の上で軽食やお飲物をご用意しております。術後の内診が終わり、問題がなければ注意点を説明して退院、帰宅となります。

鉗子分娩

「子宮収縮剤投与による分娩様式」を試みても、有効陣痛が弱い場合があります。また、前回帝王切開分娩、子宮筋腫核出術後などは、ごくまれですが、過強陣痛による子宮破裂の危険性の可能性を避けるため、強い陣痛をおこさない方がよい場合があります。このような場合は、胎児・胎盤の娩出が不十分になるため、麻酔下に鉗子による分娩となります。

手術の前に麻酔をします。クリニックによって採用している麻酔の種類は異なります。当院では、静脈麻酔と笑気麻酔を併用した麻酔方法を採用しております。
笑気を併用することで、痛みが少なくリラックスしやすい状態を作ることができます。笑気麻酔が苦手な方には、笑気麻酔を省くことも可能です。麻酔科標榜医でもある院長が患者様の体質に合わせて、麻酔薬を処方し、十分な麻酔下に鉗子分娩を行います。手術時は各種モニターを装着し、超音波ガイド下に安全性に配慮して行います。手術終了後は数時間院内で安静にしてゆっくりお休みいただいています。術後の検診・超音波検査で異常がなければ、退院・帰宅となります。

退院後は、自宅で十分な睡眠と安静を心がけて、心身の回復をはかることが大切です。翌日より入浴可能で、体調に問題なければ、一般的には個人差はございますが、1~2週間以後にパートナーとの性交渉可能です。
術後1週間前後での検診の来院が大切になります。腹痛・発熱・出血、子宮内の精査、血液検査を行います。検診は無料です。心配な症状がないかどうか確認し、ご不安に思うことは直接院長にご相談いただけます。ご安心できるように術後まで一人ひとりフォローをさせていただいています。

(注)前処置についてくわしくは中絶手術の前処置(術前処置)とはご覧ください
(注)麻酔について詳しくは中絶手術の麻酔についてをご覧ください

4.中期中絶のリスク

「中期中絶」で特に注意することは、「子宮内容遺残」、「乳汁分泌」、「弛緩出血」があります。
「子宮内容遺残」は、中期は初期と違って胎児・胎盤が大きくなっているので術後の検診では超音波検査を注意深く行う必要があります。術中・術後検診の超音波検査を十分に行いリスクに対応することが大切です。
「乳汁分泌」は「軽く胸がはる」程度を含めるとかなりの確率で生じるので、説明と対策が必要です。必要に応じて分泌を抑える薬などで対応します。
「弛緩出血」は輪状マッサージで子宮の収縮を促し生体結紮を試みます。子宮筋腫・子宮内膜症の合併の存在に注意が必要です。

中期中絶では母体にかかる負担やリスクも週数が進むほど大きくなります。初期中絶同様に手術リスクに対しては、母体の健康状態や妊娠状態をしっかりと把握することが必要です。
手術室内を整理整頓し、清潔に保ち手術器具の徹底的な殺菌消毒を行い、清潔、安全性に心掛けています。
初期中絶同様に手術リスクには常に適切に対処・対応できるように、準備を行なっております。

5.中期中絶手術を受けた後の当院でのフォロー

・中絶手術後の当院のフォローアップは初期中絶の場合と同様の部分と、中期中絶で特に注意する部分があります。
・初期中絶と同様に、出血・発熱・腹痛、感染の有無には注意します。
・「中期中絶」で特に注意することは、「子宮内容遺残」、「乳汁分泌」、「弛緩出血」があります。
・「子宮内容遺残」は、中期は初期と違って胎児・胎盤が大きくなっているので術後の検診では超音波検査を注意深く行う必要があります。
・「乳汁分泌」は「軽く胸がはる」程度を含めるとかなりの確率で生じるので、説明と対策が必要です。
・「弛緩出血」は輪状マッサージで生体結紮を試みます。子宮筋腫・子宮内膜症の合併の存在に注意が必要です。
・中絶手術によって不妊症になることはありません。「望まない妊娠をしない」ために、ピルの利用・服用または、子宮内器具(ミレーナ)の装着をおすすめしています。ピルは避妊のほかにホルモンバランスの調整、月経痛の改善にも有効です。
・当院は未成年者や筋腫・糖尿病などの合併症の方も状態・症状によって対応可能な場合がありますので、お早めにご相談ください。
・妊娠中絶手術でお悩みの方は、できるだけ早く、婦人科・産婦人科の医療機関を受診されることをおすすめします。
・術後はホルモンバランスが不安定になり尿検査での妊娠検査が陽性になることや生理が遅れることもありますが、時間をかけながらゆっくりと回復していきます。
・術後のフォローの1週間後の検診には料金はかかりません。ご不安をやわらげ安心して頂くために、ホームページでの情報の発信と、当院で手術を受けられた患者さんには、お電話でのご相談を承っております。

(注)術後の症状等について、当院の情報発信の詳細は以下をご覧ください。

保険適応は 中絶費用の保険適用
術後の症状 中絶手術後の症状と対策
出血は 中絶手術後の出血
腹痛は 中絶手術後の腹痛
生理不順は 中絶手術後の生理不順について
手術の取り残しが気になる方 中絶手術後の取り残し

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監修 竪山均 tateyama hitoshi
資格医 麻酔科標榜医 | 母体保護法指定医
当院は完全予約制です。 問診や各種相談は、個室で行っているため、ほかの患者さんに診療内容を知られることもありません。 来院後、ほとんどお待ちいただくことなく診療、検査を受けられます。 ささいなことも、どうぞご遠慮なくご相談ください。 このホームページが、あなたの不安な気持ちを少しでもやわらげるための一助となることを願ってやみません。

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