低用量ピルの服用は血栓症のリスクが高まる?初期症状や予防方法

低用量ピルの服用は血栓症のリスクが高まる?初期症状や予防方法 2023.11.09

ピルには避妊を目的とした自費ピルOCと月経困難症等の治療を目的とした保険適用ピルLEPが有ります。いずれも成分はエストロゲン・プロゲステロンの女性ホルモンの合剤です。マイナートラブルとして不正出血、吐き気、等がありますが、メジャートラブルとしての血栓症の副作用リスクが有るため、ピル服用に躊躇している人も多いと思われます。ピルと血栓症について正しく理解して、ピル服用によるQOLの高い生活を送る方法を解説いたします。

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低用量ピルの服用は血栓症のリスクが高まる?

ピル服用には月経困難症や子宮内膜症による生理痛の改善等の効果がありますが、多少なりとも血栓症のリスクもあります。そのリスクをできるだけ小さくすることがピル服用を続けるためには必要です。

ピル服用は血栓症のリスクがある?

低用量ピルにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンが含まれており、これら2つの女性ホルモンは血液の凝固を促進する働きがあります。
そのため低用量ピルを摂取すると血栓症のリスクをわずかに増加します。
例えば、ピル服用者のVTE(静脈血栓塞栓症)のリスクはピル非服用者と比較して3~3.5倍の確率で増加すると報告されています。

低用量ピルを服用することで血栓症リスクが上がる理由

血栓症が生じる原因としては、血液の停滞、血管壁の障害、血液凝固能の更新、があげられます。
エストロゲンは血液中の凝固因子の合成を刺激し血液が凝固しやすくなる傾向が有ります。またプロゲステロンは血管内皮の機能を変化させ血液がうまく流れずに血栓が形成されるリスクが高まる可能性があります。
即ち、ピルを服用していない人と比べて、低用量ピルを服用している人はわずかではあるが血栓症のリスクが上がります。VTEの絶対数が少ないといっても、ピル服用はVTEという有害事象リスクが有ることを認識すべきです。
低用量ピルによる血栓症は、服用開始後3カ月~半年の間に起こりやすいといわれています。低用量ピルの服用中は、血栓症の前兆が出ていないか確認することが大切で、定期的に医師の診察を受ける必要があります。

[注] ピルとは

血栓症はどのような病気?

ピルのメジャートラブルである血栓症と、その初期症状ACHESについての基礎知識を知ることでピル服用の障害を小さくすることができます。

血栓症とは?

血栓症(thrombosis)とは、血液中にできた固まり(血栓thrombus)によって起こる病気の総称をいいます。血液中に生じた血栓が血管を閉塞すると細胞に栄養が届かなくなるため機能障害を起こします。血栓症は脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓などにつながるため命にかかわる病気となります。
血栓症は血栓のできる部位によって、静脈血栓(Venous Thrombosis)と動脈血栓(Arterial Thrombosis)に分けられます。
また、血栓が他の部位に飛んだものを塞栓(embolus)と言います。血栓と塞栓の症状を合わせたものを血栓塞栓症と言います。
動脈または静脈に生じた血栓塞栓症を総称して動静脈血栓塞栓症といいます。血栓塞栓症の中で頻度が高く注意すべきはVTE(venous thromboembolism静脈血栓塞栓症)となります。

血栓症の初期症状 (ACHES)

血栓症の初期症状は、血栓・塞栓の発生する部位によって異なりますが、次の様な症状や前兆があらわれたら要注意です。 1.Abdominal pain:激しい腹痛。
2.Chest pain: 激しい胸の痛み、息切れ、心筋梗塞様症状
3.Headache: 激しい頭痛、めまい、失神、半身まひ、脳梗塞様状態
4.Eye speech problem: 目のかすみ、視野が狭くなる、舌のもつれ、言語障害
5.Severe leg pain: 手足のしびれ、ふくらはぎの痛みやむくみ。片手足のみに現れることが多いが、両手足の場合もある。
以上の5つの症状の頭文字をとってACHESと表現されています。
血栓症の初期症状が現れたら低用量ピルの服用を中止し、医師に相談することが大切です。

[注] ピル副作用

低用量ピル服用時に血栓症のリスクが高まりやすい人の特徴と予防方法

ピル服用に際して血栓症の起こりやすい人とその予防法を知ることで、自分に適したピルの種類やピル以外の治療方法を知ることができます。

低用量ピル服用中に血栓症のリスクが高まりやすい人の特徴

低用量ピルを服用している場合に、血栓症のリスクが起こりやすいとされる人は次の方々です。
1.血栓症の既往のある人、家族歴のある人:過去に血栓症に関連する病気、乳がんや子宮体がんを経験したことがある方も発症リスクが高まりやすく再発のリスクが有ります。家族が血栓症に関連する病気にかかったことがある方も高まりやすいです。
2.高齢:年齢が上がると生活習慣病にかかりやすく血栓症のリスクがあがります。40歳以上の方などはリスクが高まりやすいです。
3.喫煙者:喫煙は血液凝固を促進します。
4.高血圧、肥満者、脂質異常者:いずれも循環系に負荷が生じるため血液の流れを悪化させる傾向にあります。
5.遺伝的に血液凝固異常のある人:血液凝固が促進する可能性があります。

低用量ピル服用中の血栓症の予防方法

予防法には次のことがあげられます。
1.血栓を起こしにくい低用量ピル、超低用量ピルを選択する。
2.医療機関で定期的に健診のフォローアップを行う。
3.血栓症の初期症状を知っておくこと:下肢の腫れ痛み、呼吸困難、胸痛等には注意。
4.正しい避妊方法を知ること:血栓症が気になるときは医療機関の専門医に相談して血液検査や他の避妊法も検討する。
5.生活習慣の改善:喫煙をしない・禁煙が大切、適度の運動、バランスの取れた食事、こまめの水分補給、等を心がける。喫煙している方が低用量ピルを服用すると、静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、脳卒中などのリスクが上がりやすい。体に水分不足(脱水状態)になると血液が固まりやすくなる
6.長時間の移動時のエコノミークラス症候群、サウナでの水分補給に注意:血流を良くするため軽い運動とこまめに水分を取ることが大切。日中デスクワークによって同じ姿勢でいることが多い方は、下肢静脈の血栓予防に定期的にストレッチをすることも大切です。
重要なことは、自分の健康状態・体質とピルのリスクをよく理解し、医療機関に相談することが大切です。

[注] ピル副作用

低用量ピル服用と血栓症リスクの基礎知識

ピル服用と血栓症リスクの基礎知識

現在の低用量ピルは以前のピルに比べてエストロゲンの量が減少して血栓症リスクが低くなっています。しかし、VTEをはじめとした動静脈血栓塞栓症のリスクがなくなったわけではありません。
以下の基礎知識を理解してピル服用を必要以上に心配する事がないようにすることが大切です。
1.正しい服用方法:低用量ピルは、毎日同じ時間帯に服用し、飲み忘れに対しても対処法を知っておくことが大切です。
2.服用によって多少でも血栓法のリスクが有ることの知識:ピル服用による血栓症リスクの他に、喫煙、高血圧、妊娠中、過去の血栓歴と家族歴の基礎知識も必要です。
3.少しでもリスクを低減させること:ピルには色々な種類があることを知り、ピル以外の治療法があることも知っておくこと。(子宮内器具、痛み止め等)水分補給と軽い運動は血栓予防に効果が有ります。
4.血栓症の初期症状の知識:足の腫れ、胸痛、呼吸困難等のACHES症状が疑われるときは、ピル服用をやめてピルを処方したクリニックや循環器専門の医療機関を受診する事が大切です。初期の血栓なら完治することができます。
5.定期的な検診:定期的にピルを購入している医療機関において、血圧、体重、問診、血液検査などのフォローアップする事も大切です。

たて山レディスクリニックでのピルの処方

当院でピルの処方をご希望される場合は、ご来院後、問診票をご記入いただき、健康状態、既往歴・家族歴の確認と、体重測定、血圧測定を行います。必要であれば血液検査やエコー検査を行います。問題がなければ低用量ピルの処方を行い、服用方法、副作用、費用についてご説明させていただきます。

[注] ピルの飲み方

[注] ピル副作用

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監修 竪山均 tateyama hitoshi
資格医 麻酔科標榜医 | 母体保護法指定医
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