[注]「産科婦人科用語集・用語解説集」2018年日本産科婦人科学会編より
妊娠して様々なご事情から人工妊娠中絶手術を考えている方は、手術に対して不安や心配なお気持があると思われます。手術後のご自身のお体に与える影響、特に中絶手術を受けたことによる不妊についてご心配に思われる方もいらっしゃると思います。
通常の中絶手術では不妊症は起こらないことを解説していきます。
ひとりで悩まずご相談ください
03-3408-5526人工妊娠中絶手術で起こりうる合併症
当院の中絶手術は数分間と短いですが、手術中に様々な問題や合併症が生じる可能性があります。そのような副作用(合併症)に対しては適切に対応できるように、予防、準備、対処、の体制を整えております。
子宮内感染(子宮内膜炎)
子宮内感染とは、何らかの原因で子宮内膜に細菌が入り、炎症が起きている状態のことです。中絶手術後は身体力や抵抗力・免疫力が落ちているため、子宮内膜炎の感染症には注意が必要です。
予防策としては、手術は清潔状態で行うこと、手術中の抗生剤の投与と手術後の内服薬の服用は重要で、術後は体力の回復を早く行うことです。
子宮穿孔(しきゅうせんこう)
妊娠して胎児が大きくなるとそれに比例して子宮も大きくなり、子宮の筋層が菲薄化して穿孔しやすくなります。
対処法として中絶手術をエコーガイド下に可視化して行っています。
腹膜炎
子宮穿孔した場合に、菌が腹腔内に入って腹膜炎を生じることです。
防御策として、超音波ガイド下に手術を行って穿孔をなくすことと抗生剤を投与と術後1週間以内の再診で術後検診を十分に行うことです。
子宮復古不全
子宮復古不全とは、妊娠により増大した子宮が妊娠する前の状態に回復するのが遅れる現象のことです。妊娠初期の初期中絶ではほとんど生じることは少なく、妊娠中期の中期中絶手術後に起こることがあります。分娩後早期に生じるものとしては弛緩出血があります。
子宮内に遺残がある場合は子宮内容物の遺残の除去、子宮収縮剤の投与、子宮の冷却、子宮の輪状マッサージ等で改善されます。
子宮腔癒着症(アッシャーマン症候群)
子宮腔癒着症とは、手術操作によって子宮内膜の欠損がおこり子宮腔の外傷性癒着をきたした場合、あるいは結核菌等による感染により子宮腔が限局的に癒着を起こした場合で、不育症、無月経、過少月経、月経困難症などの症状を呈する症候群です。
予防策としては子宮内膜操作と感染症に対する対策を十分に行うことが大切です。吸引法を使用して抗生剤による内膜炎の防止でほとんどの場合防ぐことができます。超音波装置の普及と抗生剤の発達で、最近ではほとんど見られない副作用です。
[注]手術後に起こりうるリスク
人工妊娠中絶手術後の不妊症になるリスク
不妊症の原因が多岐にわたっているため、その原因を特定することは難しいことが多いのと同様に、人工妊娠中絶手術後の不妊症についても、その原因を特定することは難しいことが多いです。過度な掻爬術を行わないこと、子宮内膜の炎症による子宮内腔癒着症を生じさせないこと、清潔・目視・高い技術等に注意を払うことが必要です。
当院への受診 お電話で予約を入れてから、受診します。 初診日にご来院されてから、診察前に既往歴、妊娠歴、持病の確認、服用中のお薬、アレルギーの有無など問診票にご記入いただきます。また、超音波検査(エコー検査)で胎児の妊娠週数と異常妊娠の有無など妊娠状態を妊娠検査し、合併症などのリスクを確認します。血液検査でRh式血液型不適合妊娠の検査、感染症の有無、貧血など手術前に必要な各種検査を行っております。
中絶手術は保険適用外です。
[注] 中絶費用の保険適用について
同意書に記入していただき、手術費用は再診料・消費税を含んだわかりやすい料金体系です。クレジットカードの使用可能で、カードによる分割返済も可能ですので詳細はカード会社にお尋ねください。
人工妊娠中絶手術の費用は、原則として保険適用外で自費診療となります。
母体保護法により、中絶手術は妊娠21週6日迄で22週を超えて手術を行うことはできません。母体保護法指定医を標榜した産婦人科病院(医院)の医師が手術を行います。12週を超えた場合は中期中絶となります。
当院の麻酔法と手術法
手術日当日は、静脈麻酔(全身麻酔)と笑気麻酔で眠っている間に、手術は超音波ガイド下で目視の吸引法(EVA、MVA)を細心の注意をもって行っております。麻酔時間と手術時間が短く安心と安全性に配慮した中絶手術方法です。当院で採用している吸引法は、WHO(世界保健機構)で推奨されている子宮内膜にダメージの少ない手術方法です。
妊娠12週未満(妊娠11週6日まで)の初期中絶の場合には、子宮口を広げる痛みのある手術前処置は行わずに吸引法にて手術を行います。手術日当日は、来院からご帰宅までおよそ3時間です。
術後1週間前後で、必ず検診を受けていただいております。術後の回復を確認し、ご心配な症状がある場合にはお気軽にご相談ください。
通常の中絶手術が不妊症の原因となる可能性はほとんどないといえます。
[注]中絶手術の方法について【妊娠週数別】
[注]中絶手術の流れと手術後の注意点【初期・中期中絶】
[注]中絶手術にベストな時期はある?
[注]人工中絶の費用
[注]同意書について
人工妊娠中絶手術後のアフターフォロー
中絶手術を受けた後は、安静にして心身ともに無理せずゆっくりと過ごすことが大切です。術後の症状には、出血・発熱・生理痛様の腹痛などがあります。これらの症状には個人差が大きいです。手術を受けた患者様には自宅に帰られてからご不安にならないよう、起こりうる症状やその対処法をご説明しております。
不正出血
手術後の出血の原因は、一つは手術による毛細血管からの出血で、子宮収縮不全による弛緩出血が加わることもあります。もう一つの出血の原因は手術によって妊娠が終了したことによる女性ホルモンの緩やかな減少による消退出血です。出血は手術後、数日~1カ月続く場合があり、出血が全くない場合もありますが、いずれも正常です。少量の出血が長引くと子宮の中に血液がたまってレバー状になることがあります。通常は、子宮が収縮していくことによって次第に改善していくことがほとんどです。多量の出血が続く場合は、クリニックに相談してください。止血剤や子宮収縮剤の投与、輪状マッサージなどを行うことによって改善することがほとんどです。
発熱
中絶手術後は、妊娠による黄体ホルモンの影響で37度前後の微熱が続きます。38度以下で3日以内の発熱であれば、安静にして様子をみてください。次第に改善して1~2ヶ月で妊娠する前に戻ることが多いです。38度以上の高熱が3日以上続き腹痛を伴う場合には、リニックまでご連絡ください。抗生剤を投与することで症状が改善されます。幸いにも当院では術後感染症が生じた事例はありません。
術後の腹痛
術後は手術による出血とホルモン減少の消退出血による出血性の痛み、と子宮収縮痛が生じます。市販の痛み止めや解熱剤を服用することも可能です。内服薬によって次第に改善していきます。
情緒不安定
女性にとって中絶手術は大変大きな決断ですから、不安なお気持ちがあって当然です。手術前・手術後は精神的にも不安定になりやすいです。中絶手術は身体的にも精神的にも負担がありますが、院内ではでリラックスしてお過ごしいただけるようにさまざまな工夫をしております。
今回の手術は、男性パートナーやその他の方と相談してご自分本人でベターな選択をされたこと、中絶手術を受けたことが原因で不妊症になることはなく不妊治療の必要はないこと、次回も妊娠・出産できること、をご説明してメンタルケアのサポートを行っています。胎児は全例に永代供養させて頂いています。
術後も不安なお気持ちが続いて精神的負担がないように、心のケアも大切にしております。術後検診では院長に直接ご相談いただけます。
中絶後不妊の心配が残らず、安心を配慮したサポート
中絶手術後の不妊症をご心配される患者様は少なくありません。初めて中絶手術を経験された方や、中期中絶の場合は、特に次回の妊娠・出産に影響はないのかご不安になられると思われます。当院での手術の流れ・手術の方法・術前検査、等の「手術の内容」を十分にご理解いただきご心配が残らないようにすることと、術後検診でしっかりサポートさせていただいております。
通常通りの中絶手術を実施したことによって次回に不妊症になることはほとんどありません。次回も妊娠・出産は可能です。望まない妊娠をしないことが大切です。
術後の検診で問題がなければ、術後から1〜2週間で性交渉が可能です。ただし、術後2週間を越える頃より、卵巣から排卵する可能性がありますので、きちんと避妊することが大切です。今後は、望まない妊娠はしないように、女性が主体的に行える避妊方法として、ピル(OC)の内服や長期間(5年)の避妊効果が得られる子宮内避妊器具(ミレーナ)の装着などをご案内しております。ピル服用は、排卵・月経を調整するので避妊以外にも生理周期の調整や、月経量を減少して貧血改善の副効用があります。服用には副作用もありますから、正しく理解して服用することが大切です。ミレーナはピルと違って飲み忘れがないことがメリットです。ご本人にあった避妊方法が選べますので、希望される場合はご気軽にご相談ください。
当院では母体保護法指定医である院長がご相談をお受けしております。受診にはご予約をお願いします。
[注] ピルの副作用とは?