当院での初期妊娠の人工妊娠中絶手術は、母体保護法指定医の院長が、痛みの少ない回復の早い安全性に配慮した手術を行っております。12週以降の中期中絶手術も陣痛分娩様式で行っております。妊娠週数が22週を超えると、法律上中絶はできません。
妊娠12週未満の初期中絶では、前日に痛みのある子宮頚管を拡張する術前処置は行わず、吸引法という手術方法で手術を行っております。
当院のこの手術法は、静脈麻酔で眠っている間に、手術中は腹部超音波を併用しモニターで確認しながらの手術です。また、術後の検診には追加料金は発生しません。術後の「取り残し」の心配もなく、安心に配慮した手術を受けていただいています。今回は術後のこの「取り残し」について考察します。
ひとりで悩まずご相談ください
03-3408-5526中絶手術の取り残しとは
・中絶手術後の「取り残し」とは、術後に、胎児・胎盤・卵膜の一部が子宮内に残ることをいいます。中絶手術の合併症やリスク、トラブルの一つです。
・この「取り残し」で問題となるのはその遺残物の量と質によります。
完全に取り出すには、妊娠によって増殖した子宮内膜の一部も一緒に掻把する必要がありますが、あまり過度に内膜掻爬を行うと、子宮内宮の癒着が生じます。エコーで見えないくらいの少量の残存であれば、通常は生理を数回繰り返すことによって子宮内遺残はなくなり、hCGホルモンもしだいに消失していきます。これは「生理的掻爬」または待機的療法と言え、「取り残し」の心配がありません。
・問題となる遺残は、絨毛性疾患が合併していた場合、遺残量が多い場合、稀ですが「胎盤ポリープ」といわれる病態も考慮の対象にしています。
・絨毛性疾患が合併していた場合とは、胞状奇胎などの胎盤の絨毛組織がもともと存在していたということです。術前の検査でわかることが多いのですが、部分胞状奇胎などわかりにくいこともあります。この場合は、再吸引して絨毛組織がなくなるまで経過をみることになります。
・遺残物が多い場合は、待機的療法で経過をみるか、再摘出をする方法もあります。
・子宮筋腫の合併・双角子宮・弓状子宮・重複子宮などの子宮奇形の場合や、双胎妊娠・多胎妊娠・妊娠週数が小さい場合は、超音波装置で見えにくいので取り残ししないように注意が必要です。
・「胎盤ポリープ」とは、遺残胎盤が器質化して血管が入り込みポリープ様の腫瘍になることで、きわめてまれな疾患で予測・予防は難しいことが多いです。不正出血が続き、ドップラー超音波で血流が認められることで確認できます。
・当院では、術後の遺残リスクを避けるため、事前と事後に超音波検査を入念に行います。手術法は鉗子を使った掻把法とは違い、超音波ガイド下の吸引法です。この方法は手術時間と麻酔時間が短く、子宮内膜への損傷が少なく、お体への負担が少ない方法です。前日に入浴かシャワーをして頂いて、同日は入院する必要なく日帰り手術が可能で、術後の回復も早く体調もいいです。翌日から仕事をすることも可能です。
・「取り残し」をなくすためには、術後一週間前後に必ず検診を受けていただき、超音波検査、血流検査などで遺残がないか、丁寧に慎重に確認することです。当院では、この術後検診の料金は手術費用に含まれているため、検診が受けやすくなっています。
徹底したリスク管理を行い、取り残しの可能性がない様にアフターフォローさせて頂いております。
中絶手術後に現れやすい症状
・中絶手術後に「取り残し」があった場合の症状としては、「出血・腹痛・発熱」と「基礎体温の上昇・つわり症状・胸のはり」の持続などがあげられますが、このような症状は「取り残し」がなくても起こります。また、特別な症状がほとんどない場合が多いので、術後1週間前後の検診がとても重要で必ず受けるようにしましょう。
・取り残しの診断としては超音波検査、ドップラー血流検査、血液検査、病理検査があげられます。
・以下に術後の症状として、「出血・腹痛・発熱」、「生理不順」、「吐き気」、をとりあげ、「取り残し」との関連をみてみましょう。
出血・腹痛・発熱
〈出血〉
・人工中絶手術後、数日は出血がありますが、出血の状態はさまざまで個人差があります。持続的に出血する方もいらっしゃれば、出血が少量の方、ほとんど出血しない方もいらっしゃいます。おりものに血液が混ざった状態、子宮内でたまった血液がレバー状に排出されることもありますが、どれも異常ではなく正常ですのでご心配なさらず大丈夫です。
・少量の「取り残し」がある場合は、出血と一緒に遺残物がでてくることがあります。正常分娩後の悪露のようなものです。血液のかたまりと区別がつきにくいことが多いですが、一種の「生理的掻爬」です。少量であれば、このような「生理的掻爬」は異常ではなく、正常と考えていいと思います。出血量が多くご心配な場合など、気になる症状があればご連絡いただき、受診してご相談ください。
当院では術後の検診で内診や超音波検査で確認し対処しております。
〈腹痛〉
人工中絶後の痛みは、出血による生理痛のような痛みと、妊娠によって大きくなった子宮が収縮する子宮収縮痛があります。普段の生理痛よりも強く痛みを感じることもありますが市販の鎮痛剤の内服で、緩和することが多いです。子宮筋腫や内膜症の合併や、普段から月経痛の強い人に腹痛は生じやすいようです。数日で次第に痛みはおさまっていきます。術後はなるべくお体に負担がかからないようにご無理をなさらずに安静にしてお過ごしください。
・子宮内に内容物の一部が遺残している場合や血液の凝血塊がある場合は、術後も腹痛が続く原因になることがあります。当院では術後の検診で内診や超音波検査で確認して対処しております。
〈発熱〉
・術後数週間はhCGホルモン、女性ホルモンの残存のため高温相が続き、発熱状態がつづきます。39℃以上の高温が3日以上継続し腹痛を伴うときは子宮内感染による感染症を疑います。現在では、抗生剤の発達と多くのクリニックでは徹底した器具の消毒と清潔環境で手術を行っていますので、一般的には術後の性病や感染症による発熱はほとんど見られません。
・「取り残し」があっても、感染症様の発熱を生じないことが多いですが、いつまでも平熱に戻らないときはご相談ください。
(注)詳細は手術後の症状をご参照ください。
(注)出血の詳細は中絶後の出血についてをご参照ください。
(注)腹痛の詳細は中絶後の腹痛についてをご参照ください。
生理不順
・術後はしばらく、生理不順が続きます。手術が終了すると、hCGホルモンが低下し、下垂体ホルモンが上昇して女性ホルモンが妊娠する前の状態にもどってくると、生理周期は改善されていきます。
・子宮内に「取り残し」があると、ホルモンがもとに戻りにくくなって、月経不順になることがあります。ご心配のある方は、電話で予約をとって、ご来院・診察してください。
(注)詳細は中絶後の生理不順についてをご覧ください。
吐き気
・手術の直後には麻酔薬の副作用で「吐き気、おう吐」が生じる方もいらっしゃいますが、症状には個人差が大きいです。お薬と時間の経過でこれらの症状は改善します。翌日には通常ほとんど消滅しています。当院では、吐き気予防と感染症予防のために吐き気止めと抗生剤の薬を肩に筋肉注射しています。注射のあとに痛みや腫れが生じることがありますが、3日〜2週間程度で治ります。吐き気が収まっていれば、術後の飲食も可能です。当院では術後に医師の診察後の判断で飲み物や軽食をお出ししています。
・手術からしばらくしてからの「吐き気」の場合、「つわり様症状」と類似していることもあります。術後しばらくはhCGホルモンが残っていることによります。この「つわり様症状」がいつまでも持続する場合は、「取り残し」、「絨毛性疾患」を除外することが必要です。
・術後1週間前後に行っている術後検診の検査で、「つわり様症状」と「取り残し」、「絨毛性疾患」を鑑別することができます。
(注) 手術後に起こりうるリスクはこちらもご覧ください。
取り残しがなく安心と安全に配慮した手術
・「取り残しがなく安心に配慮した手術」のために、術前の超音波検査から手術中、手術後までそれぞれの段階で丁寧に慎重に処置を行っております。
〈取り残しのない手術・その1〉
手術前の検査では「取り残し」を起こしやすい子宮筋腫の合併、双角子宮・弓状子宮・重複子宮の子宮奇形を精査し、子宮後屈があるか否かを確認します。胎児・胎盤の位置と大きさを調べ、絨毛性疾患・多胎妊娠を除外しておきます。
〈取り残しのない手術・その2〉
手術は、腹部からの超音波ガイドのモニター下に行います。麻酔は静脈麻酔薬に笑気麻酔を適宜併用して十分に痛みを軽減し、取り残しのない様に目視の吸引法にて行います。
また、「取り残し」を避けるために、過度に内膜を掻把する「取り過ぎ」にも注意を払っています。
麻酔中、手術中に起こる不整脈などの様々な症状にも、万が一の場合にもすぐに適切に対応できる体制をとっております。取り残し以外にも安全性に配慮した手術を心がけています。
〈取り残しのない手術・その3〉
中絶手術後は必ずご来院いただいています。子宮と卵巣が順調に回復しているか超音波検査で状態を丁寧に検診し、子宮内の精査・確認と処置を丁寧に行っております。次回の生理の時期、妊娠の可能性、女性ホルモンの変化など今後の体の状態について説明をします。術後に心配で不安な症状などがあれば検診時にご相談ください。
また、術後にご来院しやすいように、術後検診費用はすべて手術料金に含まれ、追加料金は必要ありません。
中絶手術後の不安を解消するたて山レディスクリニックのアフターフォロー
前文の「取り残しのない手術」のその1~その3で手術は終わっていますが、不安を解消するために更にアフターフォローとして当院では情報の発信を行っています。
「取り残し」が「ある・ない」に関わらず、医療機関とは情報で連携しておくことがいろいろな問題を解決していくためには重要です。胞状奇胎などの「絨毛性疾患の合併」がある場合は高次病院との連携が必要になってくる場合もあります。「胎盤ポリープ」の発症も予測がとても難しいことがあります。誠実に信頼関係をもって対処させていただいています。
通常の中絶手術が原因で不妊に影響することはほとんどありません。次回も妊娠して赤ちゃんを出産できます。中絶の1~2週間後には性交渉も可能です。望まない妊娠をしないように、避妊のご相談に対応しています。低用量ピルの服用や、子宮内に挿入する子宮内避妊器具(IUD)ミレーナなどご希望の場合には院長にご相談ください。
当院は、術前の情報や術後の様々な症状に対する原因と対応の仕方などの情報を発信しております。
当院のホームページでそれら情報をご覧ください。