「流産の原因となる胞状奇胎とは?」、「胞状奇胎への適切な処置」、「胞状奇胎の術後の定期的なフォロー」についてご説明いたします。
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03-3408-5526流産の原因となる胞状奇胎とは
「絨毛性疾患」と「胞状奇胎」についてご説明いたします。
絨毛性疾患とは
妊娠すると、子宮内に胎盤をつくる絨毛細胞ができます。この絨毛細胞の異常増殖が原因の病態を総称して「絨毛性疾患」といいます。絨毛細胞は栄養膜細胞(トロホブラスト)とも呼ばれています。
「絨毛性疾患」は、「胞状奇胎」、「侵入奇胎」、「絨毛癌」、「胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT)」、「類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT)」、「存続絨毛症(奇胎後hCG存続症))、等に分類されます。
胞状奇胎(hydatidiform mole)とは?
・「胞状奇胎とは、胎盤絨毛における栄養膜細胞の異常増殖と間質の浮腫を特徴とする病変」と定義され、絨毛性疾患の一つです。
・胞状奇胎は、典型的な例では肉眼的には絨毛の水腫状腫大が特徴的であり、「ぶどう子」とよばれる疾患で、妊娠した子宮内にぶどうの房の様な外観が多数存在する病気です。
・詳細な原因は不明で、欧米に比べて発生はアジア地域に多い疾患です。40歳以上の高齢妊娠に発生の頻度が上昇する傾向があり、日本での頻度は700~800妊娠に1回くらいに起こるといわれています。
[注] 「産科婦人科用語集・用語解説集」 改訂第4版(2018年) 公益社団法人 日本産科婦人科学会編
[注] 「絨毛性疾患取扱い規約」 第3版 日本産科婦人科学会・日本病理学会編
胞状奇胎の発症メカニズム
・正常な妊娠は、1つの卵子に1つの精子が受精して受精卵となり細胞分裂を繰り返して生長し、胎芽、胎児となります。これは正常妊娠です。
・胞状奇胎は精子と卵子の受精の異常によって生じる異常妊娠です。全胞状奇胎と部分胞状奇胎があります。
・「全胞状奇胎」とは、1倍体の精子23Xが核の不活性化または消失した卵子に受精して入り込み精子由来の核のみが増殖する異常妊娠で、ほとんどが46XXの2倍体の染色体となります。胎児成分は存在せず多数の嚢胞状(multivesicular pattern)の奇胎のみとなります。全胞状奇胎の約10%が侵入奇胎や絨毛がんという悪性腫瘍に移行するといわれています。
・「部分胞状奇胎」とは、正常な1つの卵子に2つの精子が受精した場合に3倍体69XXX、69XXYとなり、胎児成分と嚢胞状の奇胎の2成分からなり「部分胞状奇胎」と言われています。また、2倍体の卵子に1倍体の精子が受精することもあり、一方が胞状奇胎、もう一方が正常な赤ちゃんとして成長して正常分娩にいたる場合もまれなケースですがあります。全胞状奇胎と比べて、部分胞状奇胎では続発症の悪性度の高い腫瘍の絨毛ガンが発生する確率は低いとされています。
・胞状奇胎は両親の遺伝子の異常ではなく受精の異常によって生じます。また胞状奇胎の既往歴のある方や、流産を経験した方では、胞状奇胎を経験していない方に比べて胞状奇胎が再発されやすいとされています
胞状奇胎の症状
・典型的な自覚症状は妊娠悪阻(つわり)、腹痛、流産に似た不正出血、妊娠高血圧症候群がありますが、超音波検査の普及により早い時期に見つかることが多く、正常妊娠の妊娠初期の症状と変わらないことも多くあります。子宮内の奇胎の増殖速度が早いので、通常の妊娠週数よりもお腹が早く大きくなる傾向にあります。
胞状奇胎の診断
・超音波検査で子宮内に嚢胞状の像がみられることが多く、卵巣はルテイン嚢胞が生じることもあります。子宮内病変の発育の進展が早いため、カラードップラーで病巣の血流像(stream)が見られることも多いです。
・超音波検査で子宮内の特徴的な嚢胞状の画像がみられ、血液(尿)検査で血液中(尿中)のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という妊娠性ホルモンの値が正常妊娠より非常に高値で測定されます。
・胞状奇胎は超音波検査で疑われますが、確定診断は子宮内容除去術後の病理検査で行われます。
胞状奇胎への適切な処置
・超音波診断法の発達、hCG測定法の開発により、早期の胞状奇胎に遭遇するようになりました。不正性器出血や重症妊娠悪阻などの典型的な臨床症状所見がみられず、続発性無月経のみを主訴とし、hCGの異常高値や多数の嚢胞状(multivesicular pattern)と呼ばれる特徴的な超音波所見を明確には認めない症例も多くなりました。
・早期の胞状奇胎は胞状化していない(非胞状化)奇胎のため、看過されることもあり鑑別が重要になってきています。
「胞状奇胎の治療法」と「当院における胞状奇胎の対応」についてご説明いたします。
胞状奇胎の治療法
・奇胎の除去手術
胞状奇胎の治療は、通常の流産手術と同様の方法で、子宮内容除去手術(胞状奇胎除去手術)を行います。子宮から、胎盤や胎児の組織を吸い出します。胞状奇胎は流産とはっきり鑑別が難しい場合があるので、子宮内容物は病理組織検査で最終的に確定診断を行います。胞状奇胎が疑われれば、1週間ほど期間をあけてもう一度子宮内容除去術を行います。奇胎を確実に摘出したか入念に確認し、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の血中濃度を測定し、正常値になるまで注意しながら経過観察します。
・胞状奇胎は、子宮内容除去術の術後に数%の確率で侵入奇胎や絨毛癌に進展していく可能性があり術後の定期的な外来通院で、hCGが正常値になるまで経過を測定する検査を行います。
・1回目の除去手術後で胞状奇胎陽性が疑われる場合は、胞状奇胎妊娠をより詳細な病理検査を行い、DNA診断で精査分類を行うことがあります。
・胞状奇胎娩出後の管理
胞状奇胎娩出日を第0日として、hCGホルモンを経時的に定期的に測定する必要性があります。hCG値が順調に低下している場合は経過順調型となり、hCG値の下降が順調ではない場合は経過非順調型の存続絨毛症として追加の化学療法を行う適応となります。
・胞状奇胎のうち、約10%は侵入奇胎を発症し、1~2%は絨毛がんに移行するといわれています。
・侵入奇胎とは子宮の筋層の中に胞状奇胎の一部が侵入して腫瘍性病変を形成する病気です。絨毛癌では、癌細胞が血流にのって転移しやすく肺転移が多く見られ、脳転移など全身に転移する可能性があるので、病巣の検査にはCTや MRIが使用されます。
・侵入奇胎、絨毛癌ともに抗癌剤が非常によく効く病気です。抗がん剤による化学療法が治療の中心になります。メソトレキセート、アクチノマイシンD、エトポシドの3剤の多剤併用化学療法が必要で、100%近い治癒率があり、化学療法のみで治癒可能な疾患といわれています。一般の化学療法と同様の副作用があります。
・侵入奇胎が疑われ挙児希望がない場合は、子宮摘出術も選択肢になります。難治性症例には集学的治療が行われています。
・治療終了までは避妊していただき、定期的に血中hCG値を測定します。hCG値が正常値を維持し上昇しないことを確認できましたら治療終了となります。治癒終了後6カ月~1年程度経過しても血中hCGホルモンの上昇がなければ、妊娠を希望する場合は、医師の判断で妊娠許可を出し妊娠と正常分娩が可能となります。
たて山レディスクリニックにおける胞状奇胎への対応
・当院では、妊娠確認の超音波検査で嚢胞状化(multivesicular pattern)に類似した画像が見られた場合、胞状奇胎を疑い、血液検査の妊娠ホルモンhCGの値を見ながら総合的に判断をします。胞状奇胎の患者さまは、強いつわりの自覚症状がありますが、ごく初期のうちは正常妊娠と区別が難しいことが多いです。
・治療には、通常の流産手術と同様に、子宮内容除去術を吸引法で施行しております。子宮内容物の病理検査で胞状奇胎が疑われる場合は、期間をあけてもう一度子宮内容除去術を吸引法で行い、絨毛組織がなくなるまで経過をみます。
・子宮内容を完全に除去した後は、hCG値を定期的にチェックして正常値まで下がったことを確認する必要があります。治療後も続発症を起こす可能性がありますので、通院と血液検査を欠かさず変化を見逃さないことが大切です。
・侵入奇胎や絨毛癌が疑われる時や、胞状奇胎妊娠をより詳細な病理検査とDNA診断の分類を行う必要性がある場合は、高次病院へ紹介をして転院となります。
「胞状奇胎の術後の定期的なフォロー」
・胞状奇胎は、妊娠によって誰にでも発生する可能性があります。妊娠に気が付いたら、なるべく早めに産婦人科の病院(医院)を受診し、ご自身の正しい妊娠状態の確認をすることをお勧めします。
・当院でのご相談にはお電話でご予約されるか、24時間受付のネット予約をご利用ください。当院では、患者様の不安や心配なお気持ちを和らげられるよう、サポートしています。
・胞状奇胎は初期の段階に見つけて適正にフォローアップすれば、緩解する病態です。侵入奇胎や絨毛がん、転移性肺がんや脳転移になる前に早めに見つけて処置をすることが大切です。
・胞状奇胎と診断されたら、なるべく早めに治療を行うことをお勧めします。術後は定期的にhCG値計測をしてチェックして慎重に経過観察し、術後の管理をしていきます。また、子宮内容除去術の術後には必ず検診を行って術後の子宮の状態を確認しましょう。術後に心配な症状や不安に思うことがありましたら、ご相談いただけます。
当院では、術後にはお一人お一人に合わせた丁寧なフォローを行なっており、しっかりとサポートさせていただきますので、ご安心ください。
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